ビッグデータ同化の数理

統計数理研究所 数学協働プログラム
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気象学におけるビッグデータ同化の数理


趣旨・目的:

 気象学においては現在二つの方面での研究の進展が見られる.一つは,衛星などの計測技術の飛躍的な進歩のために非常に多くの時系列データが得られるようになったこと.もう一つは,計算機技術の発達にともなって,より高精度で高解像度の詳細な現象や計測データを取り込んだ形での気象・気候シミュレーションが可能になったことである.この二つの技術の進歩にともない,双方が有効にリンクすることが可能になり,次世代型の気象予想の開発が期待されている.
 また,これらのデータはリアルタイムでかつ大容量(ビッグデータ)となっているため,これらのデータを有効に活かして,時系列データ解析や気象モデリングとその解析の向上を図ることも求められている.その実現においては,従来の手法を凌駕するような現代数理科学からの新しいデータ同化のあり方についての知見が必要となってきている.
 本ワークショップでは,この問題意識に沿って「気象学におけるビッグデータ同化の手法とその数理」をとりあげ,それに関連する数理科学・気象学の研究者間のより具体的な共同研究を推進させるためのワークショップを開催する.また,気象ー数学連携を行っている海外大学の動向に合わせた国際的な研究ネットワーク構築も目指す.

解決すべき問題:

 大きな社会的課題として,防災・減災があげられる.具体的な理学的課題としては,短時間降水の予想・ゲリラ豪雨の発生の正確な予報など防災・減災に結びつけるためのタイムリーなビッグデータ同化を行うための数理手法の創出がある.すなわち,大量のデータを短時間で処理しなければならないため,従来型のアンサンブルカルマンフィルタを単に大規模な問題にそのまま適用するのでは対応できなくなっている.一方でナッジングのような簡易的手法にしてしまうと、レーダーデータのような力学変数との結びつきが自明でない観測量をうまく同化できないという欠点がある.このために,数理科学的および計算機科学的な視点から,高速化・高精度化に対応するデータ同化手法の新アプローチが望まれている.
 ビッグデータのリアルタイム同化は解決すべき問題は多い.データ同化を見込んだ高速な気象方程式の高速数値計算手法の開発,大容量化に対応した新しい高速なデータ同化手法の開発,大容量データの圧縮や転送といった通信の問題などがある.

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last updated: 17th October 2013