平成30年7月豪雨に関する緊急対応研究会

概要

集合写真

趣旨

平成30年7月豪雨は、西日本を中心に全国的に広い範囲で記録的豪雨をもたらし、歴史的な災害となった。 この気候的背景や成因、メカニズム、予測可能性、予測情報の伝達や活用方法等について、科学的に深く分析、理解し、将来の豪雨災害の備えに生かしていくことは、科学者の重要な責務である。

そこで本会合では、気象学者による最初の緊急対応として、豪雨発生後約1ヶ月のタイミングで、 これまでの調査分析の結果を持ち寄り、特に気候的背景や成因、メカニズム、予測可能性に関する科学的な議論を深める。 これにより、現時点でのこの顕著現象に対する共通認識を得て、広く社会に発信するとともに、今後の調査分析を迅速かつ効果的に進める土台とする。

概要報告

本研究会は、当初50名程度の参加を想定していたが、これを大幅に超える106名が参加した。 大学や研究機関からの参加が多く、ほかに防災士・気象予報士3名、企業から7名、行政機関から1名、報道機関から3名が参加し、広く関心を集めた。

気象庁、気象研究所、理化学研究所、大学、一般の気象予報士から、口頭12件(各20分)、ショートトーク9件(各5分)、ポスター20件の発表が行われた。 気象庁からは全球・領域数値天気予報モデルによる平成30年7月豪雨の予測結果が紹介された。 また、今回の豪雨を引き起こしたメカニズムについて、大規模な惑星大気システム・局所的な降水システムなど、幅広い観点から議論された。 このほか、平成30年7月豪雨の成因・特徴について、気象庁異常気象分析検討会の見解が紹介された。

総合討論では、大規模から小規模スケールを含むシームレスな気象予測の重要性と課題、また予測可能性について包括的な議論が行われた。 観測・モデリング・予測可能性・データ同化・災害予測等、様々な研究者が協力して取り組むべきであり、気象学を超え、土木・水文分野と気象分野との研究協力の重要性も指摘された。 観測や数値予測等のデータ共有方法にも課題があり、多くの研究者が共同して取り組むためのインフラ・環境の整備についても議論があった。

今回の研究会で、平成30年7月豪雨に関する様々な研究の情報を交換し、議論できたことは有意義だった。 本会によって、気象学者らが平成30年7月豪雨に対して速やかな情報交換を行う目的は十分に果たされたため、検討していた9月の2回目の研究会は開催しないこととした。 この後、日本気象学会は、英文論文誌(気象集誌・SOLA)において今回の豪雨にフォーカスした特集号・特別号を編集するほか、 今秋以降に関連する研究会等を主催・共催する予定である。研究者らはさらに研究を進め、成果をまとめていくことが期待される。


参加者の内訳

参加者の内訳

鼎氏による講演の様子

総合討論の様子 会場後方から

研究会の様子

プログラム

午前

時間 講演者 内容
8:15- - 受付 (理化学研究所 計算科学研究センター 1F 正面玄関)
9:00-9:10 三好建正
(理化学研究所)
趣旨説明
9:10-9:30 新保明彦
(気象庁気候情報課)
平成30年7月豪雨をもたらした循環場と気象庁全球アンサンブル予報システムによる予測
9:30-9:50 坂本雅巳
(気象庁数値予報課)
気象庁の全球モデル(GSM)と全球アンサンブルシステム(GEPS)の予測結果
9:50-10:10 藤田匡
(気象庁数値予報課)
気象庁のメソモデル(MSM)、局地モデル(LFM)、メソアンサンブル予報システム(MEPS)の予測結果
10:10-10:30 津口裕茂
(気象庁気象研究所)
「平成30年7月豪雨」における線状降水帯の寄与と個々の線状降水帯の特徴
10:30-10:50 - 休憩
10:50-11:10 北畠尚子
(気象庁気象大学校)
2018年7月5~8日の豪雨におけるメソαスケールの変化
11:10-11:30 竹見哲也
(京都大学)
平成30年7月豪雨に係わる大気環境条件のメソスケール解析
11:30-11:50 高薮縁
(東京大学)
2018年7月豪雨の降水特性と後方の上層トラフの効果について
11:50-12:10 金丸佳矢
(東京大学)
JAXA版アンサンブル再解析データを用いた高解像度全球アンサンブル予報の結果
12:10-12:20 - 集合写真撮影 (1階正面玄関)

午後

時間 講演者 内容
13:00-13:20 富田浩文
(理化学研究所)
平成30年7月豪雨前の総観規模擾乱の役割
13:20-13:40 三好建正
(理化学研究所)
理研での予測結果:全球NICAM、領域SCALE、ナウキャスト
13:40-14:00 鼎信次郎
(東京工業大学)
高梁川・肱川流域に着目した平成30年7月豪雨に関する水文学的考察
14:00-14:20 中村尚
(東京大学)
豪雨をもたらした大気循環異常と豪雨への海洋の影響
14:20-15:05 ショートトーク (5分×9件)
田中健路
(広島工業大学)
平成30年7月豪雨における広島地域の局地的な気象場の特徴
増田善信 地球温暖化による鉛直安定度の悪化による集中豪雨とブロッキングに伴う同じような気圧配置の継続が同時に発生したことによる被害の増幅
立花義裕
(三重大学)
前線の北上を阻んだオホーツク海高気圧が発達した理由~二つの仮説とその検証~
豊嶋紘一
(千葉大学)
国交省河川局雨量計データのグリッド化プロダクト作成と,西日本豪雨事例について
若月泰孝
(茨城大学)
上流下層加湿法による豪雨の短時間予測実験
谷田貝亜紀代
(弘前大学)
APHRO_JPによる対象期間の降水分布特性および水蒸気輸送との関係
佐藤晋介
(情報通信研究機構)
神戸フェーズドアレイ気象レーダーで観測された豪雨の3次元構造
篠田太郎
(名古屋大学)
平成30年7月豪雨をもたらした水蒸気場の特徴
沖理子
(JAXA)
衛星観測からわかる平成30年7月豪雨の特徴
15:05-15:25 - 休憩
15:25-16:00 - ポスター発表
16:00-18:00 - 総合討論

※口頭発表は発表15分・議論5分を目安とします。

※ショートトークには議論の時間を含みません。

ポスター発表

  1. 田中健路 (広島工業大学): 平成30年7月豪雨における広島地域の局地的な気象場の特徴
  2. 増田善信: 地球温暖化による鉛直安定度の悪化による集中豪雨とブロッキングに伴う同じような気圧配置の継続が同時に発生したことによる被害の増幅
  3. 立花義裕(三重大学): 前線の北上を阻んだオホーツク海高気圧が発達した理由~二つの仮説とその検証~
  4. 豊嶋紘一(千葉大学): 国交省河川局雨量計データのグリッド化プロダクト作成と,西日本豪雨事例について
  5. 若月泰孝(茨城大学): 上流下層加湿法による豪雨の短時間予測実験
  6. 谷田貝亜紀代(弘前大学): APHRO_JPによる対象期間の降水分布特性および水蒸気輸送との関係
  7. 佐藤晋介(情報通信研究機構): 神戸フェーズドアレイ気象レーダーで観測された豪雨の3次元構造
  8. 山地萌果(JAXA): 衛星観測からわかる平成30年7月豪雨の特徴
  9. 山浦剛(理化学研究所): 平成30年7月豪雨におけるオホーツク海高気圧の役割
  10. 末木健太(理化学研究所): 平成30年7月豪雨における降水特性の地域差~広島と兵庫の比較~
  11. 発田あずさ(気象予報士): 2018年7月6日早朝時点での豪雨の予測可能性について
  12. 瀬古弘(気象庁気象研究所): 301メンバーのメソアンサンブル予報を用いた平成30年7月豪雨の解析
  13. 大泉伝(JAMSTEC): 平成30年7月豪雨の広領域高解像度再現実験
  14. 伊藤純至(東京大学): 平成30年7月豪雨の環境における線状降水帯の理想実験
  15. 星野剛(北海道大学): 平成30年7月豪雨における北海道および西日本での降雨量とその要因の分析
  16. 本田匠(理化学研究所): 準リアルタイムSCALE-LETKFシステムによる平成30年7月豪雨の予測
  17. 大塚成徳(理化学研究所): 神戸PAWRおよびGPM/DPRで観測された平成30年7月豪雨の降水システム
  18. 前島康光(理化学研究所): フェーズドアレイ気象レーダーを同化した平成30年7月豪雨の高解像度シミュレーション
  19. 寺崎康児(理化学研究所): NICAM-LETKFを用いた水平解像度による豪雨の再現性について
  20. 小槻峻司(理化学研究所): 平成30年7月豪雨の予測可能性: NICAM-LETKFを用いた100アンサンブル予測実験

報道等の取材に関する注意

  • 取材は事前登録制です。取材の趣旨や方法について、事前に広報担当者( r-ccs-koho(please remove here)@ml.riken.jp )までご連絡願います。事前の連絡なく、当日会場に入ることはできません。
  • 本研究会では、科学者による専門的な議論を行います。取材は以下に限定させていただきます。
    1. 撮影・録音等は、研究会冒頭の趣旨説明に限定 (9:00-9:10)。
    2. 主催者への質問は、午前の休憩時間に限定 (10:30-10:50)。
  • 取材中は、理研から配布するストラップをご着用いただきます。
  • 本研究会での個別の発表に対する取材は、主催者は関与しません。このため、各発表者に対し個別に調整いただくよう、お願いします。
  • 一般の参加者として研究会への参加を妨げるものではありません。取材が目的でなければ、どなたでも終日研究会にご参加いただけます。

参加申し込み

申し込みは締め切りました。

事前登録なしでの当日入場はできません。ご了承ください。

発起人

  • 三好建正 (代表、理化学研究所)
  • 富田浩文 (共同代表、理化学研究所)
  • 沖理子 (JAXA)
  • 佐藤薫 (東京大学)
  • 佐藤正樹 (東京大学)
  • 清野直子 (気象研究所)
  • 高薮縁 (東京大学)
  • 竹見哲也 (京都大学)
  • 坪木和久 (名古屋大学)
  • 中村尚 (東京大学)
  • 新野宏 (東京大学)
  • 堀之内武 (北海道大学)
  • 増永浩彦 (名古屋大学)
  • 渡部雅浩 (東京大学)

主催・後援

主催

  • 理化学研究所 計算科学研究センター

後援

  • 公益社団法人 日本気象学会

個人情報の取扱いについて

当サイトにおいて取得した個人情報は、「理化学研究所個人情報保護規程」に則り厳重に管理し、正当な理由なく第三者への開示、譲渡及び貸与することは一切ありません。

お問い合わせ

平成30年7月豪雨に関する緊急対応研究会事務局

E-mail: heavyrain1807(please remove here)@ml.riken.jp

その他

本研究会は公益財団法人計算科学振興財団 研究教育拠点(COE)形成推進事業の助成を受けたものです。

ページトップへ